上海交通大学の研究チームは、複数のAIエージェントを協調させ、ペロブスカイト太陽電池のデバイス構成と主要な機能層の化学組成を設計するAIプラットフォームを開発した。研究論文が、2026年5月14日付の科学誌『Science』のオンライン版に掲載された。
・4種のAIが協調し光や熱に弱いという長年の安定性の課題を克服
・100℃で1000時間後も初期効率97%を維持

データ、統括、組成、界面という4つのAIエージェントを強調し、ペロブスカイト太陽電池を設計する
ペロブスカイト太陽電池は光や熱などの影響を受けやすく、実用化する上で長期安定性が課題になっている。安定性を向上させるには、ペロブスカイト太陽電池を構成するペロブスカイト層、電子/正孔輸送層、界面層といった各層の材料組成やデバイス構造を最適化する必要がある。従来は、その設計において膨大な試行錯誤を強いられており、開発サイクルが長期化していた。
この課題を解決するため、中国の上海交通大学環境科学・工学部の趙一新教授らの研究チームは、マルチエージェント協調型のAIプラットフォームを活用する新たな設計手法を開発した。
このプラットフォームは、データ、統括、組成、界面という専門知識を持つ4つのAIエージェントが協調し、過去の論文から技術的なメカニズムを抽出することで、少量の学習データで開発の方向性を提示する。従来は、ハイスループット実験やシミュレーションを実施してラベル付きデータを生成し、それをAIモデルに学習させる必要があった。
具体的には、データエージェントが大規模言語モデル(LLM)を活用して1万件以上の文献から構造化データを抽出し、前処理する。統括エージェントは各作業を調整しながら、p-i-n型(逆型)のデバイス構造を設計する。その指示のもと、組成エージェントがペロブスカイト層の組成最適化を提案し、界面エージェントが分子構造や界面層の分析から輸送層の設計を担う。これら各エージェントの分析結果と実験データを統括エージェントが統合することで、データと実験の反復ループを構築し、予測精度を向上させたとする。
こうしたAIの分析に基づき、無機ペロブスカイトと同等の安定性を持つペロブスカイト層の組成として、ホルムアミジニウム-セシウム(FA-Cs)ペロブスカイトを特定した。また、正孔輸送層の界面には紫外線耐性を持つSAM(自己組織化単分子膜)分子を導入し、デバイス構成には二重のAl₂O₃(酸化アルミニウム)保護層をを組み込むことで、界面の安定性を強化する設計を導き出した。

ペロブスカイト組成、輸送層、および高安定性デバイス構成設計
これらの設計に基づいたペロブスカイト太陽電池は、初期の電力変換効率が25%で、100℃の環境下で1000時間連続運転した後でも、初期効率の97%を維持したとしている。
